これまで鳳凰単叢は広東省の地方標準『地理的表示製品 鳳凰単叢茶』で定義されてきました。
しかし、今年の4月に潮州市による新しい標準が制定され、今後はこちらが正式な定義標準になるそうです。
その受け止め方について、地元紙が取材していましたので、少し長いですがご紹介します。
今年の4月8日、潮州市市場監管局は『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』市級地方標準を公布し、今年10月8日から正式に施行されます。これは潮州市で始めて公布される市級地方標準で、潮州市の市級地方標準の”ゼロを打ち破る”ことになります。そして潮州市が実施する標準化戦略の重要な成果でもあります。この市級地方標準は潮州市の茶産業の発展にどのような指導意義があるのでしょうか?関連部門、業界関係者はどのようにこの標準を考えているのでしょうか?これについて、多方面に取材をしてきました。
潮州市が初めて公布する市級地理的表示製品地方標準。市内61社の茶葉企業が専用ラベルを使用
潮州市市場管監局へ取材を行うと、潮州市が『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』を公布してから6月までに、市内の全部で61社の茶葉企業が国家知識産権局の同意に基づき、”鳳凰単叢(樅)茶”の地理的表示保護専用ラベルを使用することになったそうです。
取材によると、潮州単叢茶の標準化発展をより良く進めるために、関連する規定に則り、元々広東省質量技術監督局が公布していた地理的表示製品地方標準『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』(DB44/T 820-2010)は廃止されることになり、潮州市は新たに新しい市級地理的表示製品地方標準『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』を制定する必要がありました。聞くところによると、2018年『中華人民共和国標準化法』が改正され施行されてから、かねてより設区市(訳注:市内に区を抱える水準の市)には地方標準制定の職能が与えられており、地方経済社会の発展に対する標準の需要に対し、標準を増やして有効に供給しなければならないのです。
潮州市市場監管局は潮州市地理的表示製品市級地方標準の制定に積極的に動き出し、調査研究、論証、プロジェクトの立ち上げ、公示、標準の起草と意見及び提案の募集、専門家を組織し評価を行い、何回にも及ぶ修正を経て、4月8日、潮州市市場監管局はDB4451/T 1-2021『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』市級地方標準を公布しました。
『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』市級地方標準をざっと見てみると、そのなかには地理的表示製品鳳凰単叢(樅)茶の用語と定義、保護範囲、環境要求、栽培管理、加工技術、品質要求、試験方法、検査ルール、表示、ラベル、包装、輸送、保存と賞味期限などが明確にされています。さらに鳳凰単叢(樅)茶地理的表示製品保護範囲図、鳳凰単叢(樅)茶栽培技術、鳳凰単叢(樅)茶摘採技術も付属しています。
この標準は潮安区茶葉協会が主導して起草し、潮州市茶葉科学研究センター、潮州市食品検験検測センター、広東南馥茶業有限公司などの20あまりの機関が起草に参加しました。今回の標準は、鳳凰単叢(樅)茶の生産技術と製品の品質要求の規範となり、潮州の茶産業の地蔵区可能な健全な発展をより推し進め、潮州の特色工夫茶文化を伝承し発揚させ、市全体の経済社会の高品質な発展を推し進める上でも重要な意義があります。
標準を公布して以降、潮州市は標準、ブランド、標識、偽造防止の”四統一”の推進を行っていて、”鳳凰単叢”標準化シリーズを構築し、潮州単叢茶の標準化、ブランド化、産業化、品質化の発展を推進しようとしています。
そのうち、潮州市市場監管局は茶葉生産企業に対し、国家標準『烏龍茶第6部分:単叢』、地方標準『烏龍茶鳳凰単叢茶葉』、地理標準専用地方標準『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』にあわせた組織的な生産を行うことを奨励していて、これにより潮州市の茶葉生産企業が統一的な生産品質標準となることを目指しています。『潮州市市場監督管理局 ”鳳凰単叢(樅)茶”の名称の統一規範提案レポート』(潮市監[2021]33号)に照らし、”鳳凰単叢(樅)茶”のブランドに統一を図っています。
潮州市市場監管局は真剣に各部署、各県(区)の局が生産環境における茶葉の品質安全のグレードアップ活動に取り組んでおり、茶葉生産企業に”鳳凰単叢(樅)茶”に関連する標準に照らした標準化生産を行うことと『食品安全国家標準パック済食品ラベル通則』の要求に従った統一標識の使用を要求しています。6月までに、潮州市では全部で195社の茶葉生産企業が食品生産許可を獲得しています。
潮州市では地理的表示の育成と申請作業を積極的に行っていて、”鳳凰単叢”が地理的表示集合商標に登録成功したことや、国家地理的表示製品保護を獲得し、さらに初の”中泰3+3”、”中国ヨーロッパ”地理的表示相互認証保護製品リストへ相次いで登録されたことなどを後押ししていて、単叢茶ブランドの付加価値と国際影響力を高めています。潮州市市場監管局はさらに潮州市の茶葉食品生産許可企業に対して、鳳凰単叢(樅)茶地理的表示製品専用ラベルの積極的な申請も奨励していて、6月までに、潮州市内では全部で61社の茶葉会社が国家知識産権局の同意に基づき、”鳳凰単叢(樅)茶”の地理的表示保護専用ラベルを使用することになり、さらに地理的表示製品専用ラベルが要求する、統一偽造防止コードも使用します。
追加された重要品質指標で茶葉の品質安全を確保
『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』は和菓子で初めて審査を通過した市級地方標準ですが、どこか新しくあるいは調整された指標があり、茶葉企業が注意すべき点はあるのでしょうか?これについて、潮州市質量計量監督検測所品質保全室の主任で、高級工程師の黄奕娜さんに取材しました。
黄奕娜さんによると、国家標準GB/T 30357.6-2017『烏龍茶 第6部分:単叢』と比べて、潮州市が公布した市級地方標準DB4451/T 1-2021『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』はさらに厳格で、品質指標の面では、新たに”粗繊維”と”茶ポリフェノール”の2項目が追加されたとのことです。彼女によると、この2項目は単叢(樅)茶の比較的重要な理化学指標で、”粗繊維”は茶葉の固さや柔らかさを体現していて、”茶ポリフェノール”は茶葉の色、香り、味を決定し、さらに機能の主要成分です。
廃止される予定の地方標準DB44/T 820-2010『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』と比べると、市級地方標準DB4451/T 1-2021『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』の品質指標には、新たに”総灰分≦6.5%”の項目が増えています。灰分は茶葉を高温で焼いた後に残る無機物で、主には無機塩と酸化物です。総灰分が数値を超えると茶葉の柔らかさが十分ではないこと、すなわち硬い葉や古い茎が多すぎる、あるいは茶の加工工程で泥や砂などの雑質が混入している可能性があります。
黄奕娜さんは、新たに公布した市級標準の中で、新たに追加された品質指標”総灰分”のほかに、”水分”、”粉末”の理化学指標の規定値も変わっていると言います。そのうち、”水分”はもともと”≦6.0%”でしたが”≦7.0%”に高まり、”粉末”の指標はもとの省級標準が”≦1.5%”でしたが”≦1.3%”に下がっています。
注目に値するのは、古い標準では、”官能指標、理化学指標と正味の含量”のいずれかが最初の検査で不合格だったとしても、倍量のサンプルで不適合だった項目を再検査すれば、再検査の結果が採用され巻いた。しかし、新しく公布した市級標準では判定ルールがさらに厳格になっていて、”官能指標、理化学指標、正味の含量、汚染物許容量及び農薬最大許容量”のいずれか一つの指標でも不合格となれば、すぐにその製品は不合格と判定されることになります。
標準は既にリリースされており、いかにそれを実施させていくかがより重要になります。今後は潮州市質量計量監督検測所はその職責を全うするために、企業と上級管理部門に対して技術的なサービスと技術サポートを提供し、超州市市場監督局と協力して、この標準の宣伝と徹底を積極的に行い、関連する標準に疑問があれば回答し、茶葉企業がより良く標準を理解し、標準をより良く使い、茶葉会社の品質管理水準を高め、茶の品質の安全を確保し、より多くの消費者に”安心なお茶”を飲んでいただけるようにします。
茶葉企業が統一ブランドを作ることを促し、鳳凰単叢茶の販売市場を広げる
「『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』の市級地方標準の制定は、鳳凰単叢茶の産業化発展をより完璧なものにし、さらに科学化する鍵の一歩です」本紙の取材時に、潮安区茶葉協会会長で、広東南馥茶業有限公司の董事長・林偉周氏はこのように言いました。
「この標準の制定は茶葉会社、市場及び消費者にとって良いことです」と林偉周氏は言います。一つは、茶葉会社茶農家の生産技術を高め、規範的な茶葉生産、加工と販売という環境をつくり、茶製品の品質の安定性と安全性を高める点。もう1つは、現在、潮州単叢茶が市場で直面している”良い茶は有るがブランドが無い”という状況で、製品標準が統一されておらず、規範化されていなくて、茶葉の知名度を高めるのが難しいのです。統一標準が実行されれば、より多くの茶葉企業で規範化した生産が行われ、統一ブランドを打ち出すことができ、市場も段々拡大するでしょう。
林偉周氏は、一般の消費者がもっとも関心を持つのは茶葉製品の品質安全です。標準の制定と施行は、悪いものを良く見せたり、品質等級を偽る、添加剤を濫用するなどの現象の発生を徐々に減少させ、一定程度消費者の茶葉の品質安全に対する疑念を打ち消すことができるのではないか、と見ています。
単叢茶産業の茶農家の増収は、緑色生態産業の発展にも有益な促進作用があります。林偉周氏は、より多くの茶葉会社茶農家が共に標準を遵守し、茶葉の生産、管理、品質のレベルを高め、茶産業の市場化程度を高めることが、茶葉の持続的で健全な発展のベースになり、ともに消費者の利益を守り、多くの人たちに良いお茶、安心できるお茶を飲んで欲しい、と考えています。
林偉周氏は、今後は潮安区茶葉協会が音頭を取って、会員企業の標準に照らした茶葉の加工製造、統一的な緑色生態ブランドを打ち出し、規範的な生産を実現して、茶葉の品質安全を確保したいです。同時に、会員企業に積極的に”鳳凰単叢(樅)茶”地理的表示製品保護専用ラベルの使用申請を行うことを奨励し、鳳凰単叢茶の販売市場の拡大に繋げたい、としています。
茶葉の標準化生産を進めることが単叢茶の金の看板をより磨き光らせる
「現在、市場には単叢茶の呼び方をするものが多すぎます。たとえば、”鳳凰単叢””嶺頭単叢””潮州単叢”などで、これは単叢茶の対外的な宣伝効果を一定程度弱めています」と広東天池茶業股份有限公司の副総経理である鄭協龍氏は指摘します。『地理的表示製品 鳳凰単叢(樅)茶』市級地方標準は鳳凰単叢(樅)茶の用語と定義を規定しており、この問題を解決するのに有効かもしれません。
この標準の中では、単叢茶の試験方法、検査ルール、ラベルなどの面で統一規定がなされています。茶葉会社は公式の検査設備によって茶葉の出荷時検査を行う必要があり、消費者に対してより専門的な検査のデータレポートを提供できます。同時に、標準化生産を始める際の要求、加工の経営モデルの管理、高中低山茶製品の標準化、規模化、大量化が実現できます。このことによって、消費者は単叢茶の製品の詳細情報が直感的に分かり、”舌の上の安全”を守ることができ、さらに単叢茶の金の看板をより磨き上げることができると思います。
鄭協龍氏は、自社の製品もより標準に近づけるために、標準生産の長期的な効果の仕組みを作り、標準化生産をより深く推進するつもりです。彼によると、”私たちは他の皆と一緒で、標準、ブランド、標識、偽造防止の”四統一”をし、”鳳凰単叢”の標準化システムの構築のために努力します”といいます。
デジタル化管理の実行が地理的表示製品ブランドの伝承
市級地方標準『地理的表示製品鳳凰単叢(樅)茶』では、鳳凰単叢茶の原産地が特定の地域であることが表示されていて、鳳凰単叢茶の特定の品質と信頼などの特性を体現しています。潮州市伴雲茶業有限公司の総経理である文及宇氏は、標準の制定は鳳凰単叢茶製品の等級の評価、品質判定の可操作性を顕著に向上させ、単叢茶ブランドの保護、生産販売規範と産業の高品質な発展に対して重要な意義があると考えています。
文及宇氏は、この標準が施行された後、鳳凰単叢茶の保護、管理と宣伝がよく推進されて、地方の特色経済、特に農業、旅行業の発展に良い助けになると考えています。彼によると、「今では、人々はより天然で、グリーンな消費を追い求めるようになっていて、農産品の上に地理的表示商標が貼ってあるかどうかは、現在の大衆の消費理念にまさに適合しています。これ無しには地元の優良な特色製品を保護すること、特色ある産業の発展を促進することはできず、さらに生態環境の改善の面でも有利になることでしょう」と話します。
鳳凰単叢茶の産業集中度は低く、関わる主体、商品流通環境があまりにも多くて、業界の発展が複雑多変になってしまっています。文及宇氏は農業生産の特殊性に対し、伝統的な管理方法の保護に頼るのではこのような地理的表示製品においては奏功しづらいと指摘しています。これは各地の業界協会、政府と関連部門が連携を強めて、監督管理を強め、技術と制度に対してイノベーションを進めなければなりません。彼は、関連部門が『鳳凰単叢茶産地証明標章管理弁法』を提出し、さらにモバイルインターネット、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの先進技術手段を用いて、”鳳凰単叢茶デジタル化管理システム”を構築し、茶園内の茶農家と茶葉企業を統一的にデジタル化管理をするようにし、突出したブランドの核心の要素とすることができれば、鳳凰単叢茶の持続的な発展ができるのではないか?と提案します。
現在、伴雲茶業は既に”鳳凰単叢(樅)茶”地理的表示製品保護専用ラベルを獲得しています。「一つの製品の上に地理的表示ラベルを貼ってからは、これが特定の地理、人文的な要素によってできているものだと分かるので、もはや”普通”ではなくなります。」と文及宇氏は言います。高品質な製品の位置を確保し、”鳳凰山外山単叢茶”製品の付加価値を高め、製品の信頼度を高め、生産の規範化を促進し、地理的表示ブランドを伝承していくつもりです。
市政府の標準起草を祝うための記事なので、やや提灯記事的ではあるのですが、注目すべき点は中国の標準システムが大きく変わっているということです。
これまで国や省などが名茶の定義を行ってきましたが、そうしたものを廃止して、団体や市政府などに標準起草を担わせる方向になっています。