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天福茗茶の地元密着型販売戦略

台湾系の中国茶チェーン店である天福茗茶。
コロナ禍に見舞われながらも、業績は堅調に推移しているとのことです。
その原動力になっている地元密着型の販売戦略について、福建省福州地区の担当者の方が解説している記事がありましたので、紹介します。

 

「今年は新型コロナウイルス肺炎の影響を受けましたが、それでも天福茗茶の業績は下がらずむしろ上昇しています。終わったばかりの”双11”商戦では、天福茗茶は天猫(訳注:中国の大手ショッピングモール)の茶製品の販売でトップになりました。私たちは大陸での発展について自信に満ちています」台湾企業の天福集団の福州地区副総経理である李尚儒氏は言います。大陸では国内の大循環を主体として構築し、国内と国際の双方の循環を相互に促進させていくことで、新しい発展の布石を打っています。この背景の下で、大陸の内需市場は企業が開拓すべき主戦場になっています。天福は新商品の開発に力を入れており、フルーツ酒、茶食品、天福茗茶の名を冠した金門高梁酒などを売り出し、消費者に歓迎されており、業績もそれに伴って上昇しています。まもなく、天福では、ツバメの巣と紅茶味の佛跳牆などの高級な新商品を発売するでしょう。

李尚儒氏の実家である南投県は台湾最大の茶産地で、彼は小さい頃から茶に親しんできました。台湾から海を渡って南開大学(訳注:天津市にある大学)で勉強していたとき、台湾人ビジネスマンの李瑞河氏が創業した天福茗茶は、既に天津に店を開店しており、李尚儒氏は自然と店の常連客になっていました。
茶文化を好んでいたこともあり、2007年、李尚儒氏は李瑞河氏が創業した漳州科学技術職業学院に招聘されて教えることになり、市場開発とマーケティングの主任と国際交流所の所長を担当しました。漳州科学技術職業学院は大陸で初めて台湾の学生を招き入れた民間の高級教育機関で、この学院では茶産業の人材の育成を主要な目標としていました。

李尚儒氏は、台湾茶のルーツは福建にあり、高山烏龍茶が主流になっています。大陸の茶の種類は豊富で幅広く、茶文化の歴史も長いと言います。天福集団は茶葉の栽培、販売と茶食品の生産、茶器の製造などに携わっており、学生は学校で茶葉に関する知識を学ぶことが出来、茶葉の栽培、製造から販売などの一連の流れを、全面的に鍛錬できるので、多くの台湾の学生がやって来ています。

2009年、福建省は、大陸で台湾住民の専門技術職務資格の認定に関するトライアルを行う省となりました。福建で経済、農業、衛生などの専門技術を用いて直接従事し、かつ大陸の法定定年年齢に達していない台湾の同胞は、自主的に申請を行うことができます。2009年11月、指導業績が優れていたことから、李尚儒氏は初めて大陸の講師職業資格を取得した台湾人の一人となりました。李尚儒氏は、専門技術職資格を取得できることは、台湾の人材が大陸にやって来て発展に寄与する上で、良い土台になっていると言います。

天福集団は、現在、大陸で規模が最も大きい台湾資本の茶葉会社です。市場の分析をより良く行うため、数年前、李尚儒氏は学校を離れ、グループのマーケット部で仕事をするようになりました。「見てください、これは福州の消費者のためにオーダーをして作った三坊七巷をパッケージにしたジャスミン茶のギフトせっとです。これは産地認証のある広西六堡黒茶、雲南冰島普洱です。誠実と信用による経営と特色あるサービスが私たちのモットーです」と李尚儒氏は知り尽くしています。

「お客様が来店されたら、私たちはまず1杯の熱いお茶を差し上げ、そしてお茶の食品をお渡しし、ゆっくりと味わってもらいながら、細やかに聞きます。手の中にある一杯のお茶を飲むことで、茶の歴史、茶文化などを飲んだ後の余韻としてお伝えしていきます。中国茶とケンタッキー、マクドナルドなどの西洋のファストフードが違うのは、私たちは体験型のサービスを追究しています」と李尚儒氏は言います。大陸は大きく、各地の茶文化は千差万別です。そこで、私たちは新しい店を開くたびに、必ず努力をして地元の茶文化を理解します。福州では、年輩の客向けに炭火焙煎による岩茶を開発し、さらに旅行客が買うのに便利なように買いやすいギフトセットなどを開発しました。李尚儒氏は、大陸の市場は大きいですが、ライバルも少なくなく、皆が競争し合いながらお互いに学んでいく必要があります。李尚儒氏によると、実力のある強大な地元の茶葉会社のほかにも、最近、新興勢力になっている”喜茶”などは若者に大変評判が良いので、これも彼らが全く新しいニューリテールの考え方をもたらしているのです、と言います。

「かつて、私たちは天猫、京東などのオンラインネットモールに主に力を入れていましたが、現在は私たちはWeChat、TikTokなどのプラットフォームでどうマーケティングを行うかについて積極的にトライをしています」と李尚儒氏は言います。天福集団は大陸に1200あまりの店舗を持ち、現在は既にアリババと提携協議を済ませており、オンラインでの発券とオフラインでの消費を行う新しい営業モデルを取り入れ、若者を店に招いて体験してもらうことに注力しています。このようにして店にやってきてもらった消費データは、企業にとっては重要な財産となるのです。多元化したメディアによる情報発信の研究、広告モデルの絶え間ない革新は、李尚儒氏を毎日、忙しくそして楽しいものにしています。

李尚儒氏は、”第14期5カ年計画”が提出され、台湾系企業が”一帯一路”の建設に参加することが支持され、その内容は実質性と実用性がとても強くて、これは台湾系企業に”海外進出”という面で大きなチャンスを与えるものです、と言います。「イギリスはお茶を自らでは製造しませんが、”リプトン”という世界的に知られた茶葉ブランドを創立しました。茶文化の源は中国にあり、私が最も強く願うのは、両岸の茶人の共同した努力によって、世界的な中国茶ブランドを作り上げることなのです」と李尚儒氏は述べました。

 

一見するとただのインタビュー記事なのですが、中国側が用意している台湾人を取り込むための職業認定制度について言及していたり、天福の地域に溶け込むための接客と商品戦略について述べられていたり、一帯一路をきっかけにして茶文化輸出をするという国策に乗りつつ海外進出を考えていることを述べたりと、なかなか面白い記事では無いかと思います。

 

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