中国では農薬問題に消費者が過敏になっており、最近では農薬などを使用しない生態的防除(绿色防控)を行う茶園(生態茶園といいます)が増えています。
名茶として知られる黄山毛峰の茶園の中にも、そのような方法を導入する茶園があるようです。
安徽省黄山市徽州区楊村郷の山深くで、53歳の蒋有兵さんがここ数日、自分の茶園で春茶の茶摘みに追われています。彼の動作は熟練しており、茶樹の最もフレッシュな葉っぱを摘み取ると、竹かごの中に入れていきます。
茶園の中には、多くの黄色い紙の板が緑色の茶樹の隙間に刺さっていて、一枚一枚の”金色の名刺”が目にも鮮やかです。近づいてみてみると、紙の板には多くの小さな虫が粘着しています。「これはいわゆる”黄板”というもので、茶葉に有害な虫をつけるための専用のもので、このようにするので私たちは農薬を撒く必要は無いのです」と蒋有兵さんは言います。
午後4時すぎに、蒋有兵さんは急いで山を下り、暗くなる前に摘み取った生葉を近くにある謝裕大の茶葉初製工場に持ち込みます。「生葉はその日のうちに加工する必要があります。そうでなかったら出来たお茶は美味しくありません」
これは蒋有兵さんが毎年の春に行う決まった仕事で、彼は楽しくはあっても疲れはしません。小さな小さな茶葉が、彼を貧困から救ってくれたのです。「春茶はだいたい1万6千元を稼いでくれます」と蒋有兵さんは言います。現在建設された生態茶園は、茶葉の品質が良いので価格も自然と高くなります。茶摘みの季節が過ぎれば、蒋有兵さんは地元の茶葉加工工場に働きに行きます。「私たちはここで基本的には茶葉によって豊かになったのです」。
楊村郷の人口は3000人あまりで、1万畝を超える黄山毛峰の茶園があり、毎年3月中旬に茶摘みを始めます。黄山毛峰は緑茶に属し、中国十大名茶の一つで、ファンが多くいます。お茶の愛好家にとっては、頭春茶、明前茶、雨前茶などそれぞれの時期の茶葉は味わいがそれぞれ違い、価格も自ずと差が出てきます。
「いつ積まれたものか、何枚の葉っぱを摘んだのかは、とても重要です」と謝裕大茶葉股份有限公司の研究開発センター主任の桂利権さんは言います。
謝裕大社は、毎年、茶農家の生葉を大量に買い上げることが出来ます。桂利権さんによると、今年の茶摘みは例年よりも10日前後早くなり、黄山毛峰の生葉の価格は例年よりも少し高くて、茶農家はそのメリットを受け取れるだろうと言います。「現在、茶園の生態的防除を進めているので、茶葉の品質は例年よりも良くなっています」。
黄山市には現在茶園面積が80万畝あり、黄山毛峰、祁門紅茶、猴魁などの名茶は皆ここで生産されます。黄山市茶葉業界協会秘書長の許乃新さんによると、2020年から黄山市は茶園の生態的防除を推進しています。病虫害の予測予報を根拠にして、市内の重点茶産郷鎮、村と企業の茶園で、”粘虫黄板+生物農薬+生態農芸”モデルを普及させていて、”黄板”は既に1600万枚配送、設置されていて、茶園の有機農薬使用量は大幅に減少しています。
”黄板”は昆虫が黄色に向かう性質を利用して害虫をおびき寄せて駆除するもので、ウンカやミカントゲコナジラミなどの茶樹の主要な害虫を駆除することができ、近年成熟してきている生態的防除技術の一つです。
許乃新さんによると、”黄板”は茶樹よりもだいたい10cm高いところにつける必要があり、高すぎても低すぎてもいけないと言います。高すぎると虫が上まで飛んでいきませんし、低すぎると茶樹に粘着したりすることもあって、茶摘みが不便になります。黄山市の多くの生態茶園では、”黄板”のほかに、誘捕器、殺虫灯などの生態的防除設備があって、目的はいずれも農薬の使用を減少させることです。
中国の事情に疎い方は、以前のイメージがあるのか農薬を撒き放題だと思っている方もいます。
が、現在の中国ではこうした”生態茶園”と呼ばれるスタイルの茶園が増えてきており、むしろ日本や台湾の茶園よりも農薬使用量が少ないことも多いのです。