中国茶ファンのためのデータベース&ニュース

  1. 歴史と文化
  2. 896 view

シェ族:豊かな茶文化を持つ人々

福建省や浙江省を中心に分布する少数民族であるシェ族(畲族)。
茶を生活に取り入れていることでも知られていますが、それをまとめた記事がありましたのでご紹介します。

 

人口は百万人足らずですが、豊富な茶文化を有するシェ族は、日常生活、労働、客と会うとき、婚姻、祭祀そしてちょっとした休憩の場面でも、そこには豊富で趣のある茶文化を見ることが出来ます。
シェ族の人々は、茶文化を麓から山頂に至るまで、原始的な自然の品質を維持し、それを伝え、それぞれの大の人々の感情で磨き上げようとしています。

ここは適切な茶文化を創るのに適しています。1つには豊富な茶文化が生き残る土壌があります。2つめに茶文化が育つ気候があります。3つめに茶文化を創るために働く女性がいます。この天、地、人の優れた条件があります。シェ族の人々はあらゆる可能性を見出し、タイミングを失わずに茶が成長するのに適した土壌で茶文化を育んでおり、”シェ族の山には茶を植えない畑はない”、”畑の中に茶が無ければ家は建たず、山の上に茶が無ければ村は出来ない”などのシェ族のことわざが残されています。

シェ族の女性たちは勤勉で素朴で、みなが茶文化を創る名手です。サツマイモを細く削るだけで無く、茶の実を拾い、茶葉を摘むことについても、彼女たちは茶文化を創る名手なのです。『摘茶歌』、『采茶歌』、朗々と歌い上げる『敬茶歌』はシェ族の人たちが皆歌うことが出来る基本の茶歌です。

恵明茶が有名ですが、これは1つにその自然な生長環境が独特で恵まれていること。2つ目に独特の製茶技術があります。伝統の”鍋炒り茶”によって作られる金奨恵明茶は、外観の色合いは翠緑で、花香が馥郁として、芽葉ギュッと締まり、味わいは甘くてうまみがあります。

お茶を用いて、年輩の方をもてなすのもシェ族の伝統的な習俗です。毎年、清明は茶摘みの時期で、シェ族の奥さんは自ら数斤の上等なお茶を茶摘みして作り、密封して保存します。これは年初にお父さんお母さんと親戚の人たちが集まって行う”春節茶会”に備えるためで、綺麗な山の泉の水を湧かしてお茶を淹れ、お湯が沸いたあとも片時も茶文化を作ることを怠りません。茶道具は必ず薄い磁器の碗を用い、最初に少量のお湯で茶葉をうるおし、七分目までお湯を注ぎます。

それぞれの場面に応じて、異なる茶文化があり、二碗茶はお客様をもてなすときのものです。お客さんがつく前に、主はまず一鉢の香りのある米酒を温めて、お客さんが門のところに着いたら、主はまずお客様に一杯の米酒を勧めてお腹を温めてもらい、シェ族のおばあさんが山の歌を歌いながら、お客様を八仙桌のところまで連れて行って、座らせ、お茶を淹れてあげるのです。
お茶を飲むときは、シェ族のおばあさんは客の好みに合わせてゴマや大根を干したものなどを混ぜ合わせて一緒に食べてもらいます。一碗を食べ終わったら、親切な主がお客さんのためにもう一碗を勧めます。”一碗を飲むのは情のないお茶で、二碗飲むのは長寿茶”、”一碗は苦く、二碗は補い、三碗でお腹を綺麗に洗う”といいます。客は主のお茶を飲むだけならば、第二碗を飲まなければなりません。

シェ族の婚礼のしきたりでの茶文化もまた情緒に満ちています。仲人の女性が女性の家に縁談を持ちかけるときは、必ず一包みの良いお茶を持って行かなければならなくて、俗に問茶といいます。女性の家がもし同意すれば、茶葉を収めます。もし同意しなければ、茶葉は封を切らずに仲人の女性が持ち帰ります。男性の家が女性の家に結納をするときは、直接いくらの金額かは聞くことが出来なくて、何両のお茶が必要かと聞きます。これを俗に問茶銭といいます。結婚したい新郎が初めて新婦としたい女性の家を訪れる際は、かならず茶缶を1つ持っていき、その缶の中にはニワトリの卵と茶葉を入れて行きます。もし女性の作る糖吞茶蛋を食べることが出来たら、翌年の春節が来たら娶ることができます。そうでなければ、待たなければなりません。このことは壺圇茶(シェ語)と言います。新婦が嫁に行く日は、自ら一杯の新娘茶を淹れます。お茶を提供するときには山歌を歌う必要があって、客の質問に答えることで、一族の人々の祝福を受けます。

シェ族の女性が嫁入り後に初めて帰省するときは、家の女性主人が風炉を起こしてお茶を準備し、客人に飲ませます。帰ってきたら新婦は踊るようにすぐに母親の元に行き、手伝います。母親が作った点心をまずはお客様に振る舞います。母親は良い恵明茶を広口の大きな碗に入れ、土鉢からお湯を掬ってお茶を立て、軽くかき混ぜます。このあと、めいめいの茶碗の中にほんの少しの砂糖を入れ、広口の大きな碗から少しお湯を注いで、砂糖を溶かします。同時にひとくちのお碗の中の茶をそれぞれの碗に注ぎ、新婦がやってきたお客様に食事を分け、敬茶対歌を歌い始めます。お客様が食べたあとに、みんなで楽しげな雰囲気の中でダンスを踊ったり、対歌を歌ったりします。とても長い婚礼の過程はここでようやく終わるのです(回門茶)。

シェ族の祖先を祀る際の茶文化はとても重々しくて厳粛です。毎年1月15日、シェ族の人々が祖先を祀る前には、みな茶水を用いて手足を洗います。これを洗穢(シェ語)と言います。この後、村の入口に向い、道行く人に踏んでもらいます。これを踩穢(シェ語)と言います。祭祀が始まると、まず神銃を三発鳴らし、爆竹に火をつけます。族長が祖先に対して酒を勧め、茶を勧め、族中の皆が叩頭してお祈りをし、シェ語で『高皇歌』をうたい、かつてはさらに”龍頭舞”と”鈴刀舞”も行ったそうです。舞踊が終わると祖先を祀る祭祀は終わります。

二碗茶、新娘茶、回門茶、祭祀茶はそれぞれシェ族の貴重な文化であるだけではなく、変化を経ながら続いてきた茶の習俗であり、さらには茶文化の不思議さでもあります。

 

普段では使わないような特殊な用語が多いので、ニュアンスが違っている可能性もありますが、かなり個性的な茶を用いた習慣・慣習が残っているようです。
中国は多民族国家なので、民族ごとの茶文化の違いというのも面白いと思います。

歴史と文化の最近記事

  1. 大紅袍母樹の生葉の永久性標本、故宮博物院で展示

  2. プーアル茶のパッケージは、なぜ綿紙を使うのか?

  3. 1973年以前にプーアル熟茶は存在したか?

  4. 「工夫茶」と「功夫茶」の違いとは?

  5. 「2・3・4・6」の数字で解説する白茶

関連記事

PAGE TOP