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法外な値段の武夷岩茶の裏にある事情

武夷岩茶では、最近、”牛肉”、”馬肉”などの産地を細分化したお茶が人気を集めていて、1斤1万元を超えるようなお茶も珍しくありません。
しかし、産地の状況を見ると、この状況はあまり好ましいものではありません。
その内幕に迫った記事がありましたので、少し長いですがご紹介します。

 

先日、福建省武夷山核心景区内にある、133畝の茶園の10年租借権がネット上の公開オークションで、62回の入札を経て、最終的に7400万元で落札されました。10年前には、その租借価格は600万元あまりだったので、10年の間に価格は10倍あまりになりました。
華やかな裏では、隠れたリスクも注意を払わなければなりません。調べてみると、武夷岩茶の販売はまさに”氷火二重天(暑さと寒さが同居する日)”にあります。”正岩茶”、”山場茶”の旗印の岩茶は1斤数千元から数万元、一~二十万元にもなり、その中には価格を吊り上げて高価格にした者が笑っています。中~低価格の岩茶は同質化が進んでおり、販売チャネルも狭く、茶葉も在庫が積み上がっていて、大量の外地茶(訳注:武夷山以外のお茶)が本物になりすまして、市場に大量にあり、行く手を阻んでいます。
このような混乱を突破し、持続的で健全な成長のみ地を歩み、千年にわたる岩茶の看板を磨き上げることhさ、武夷岩茶にとって解決が待たれる難題です。

1.上には天価茶があり、下には売れ行きの悪いお茶がある

 

茶園を競り落とした武夷山瑞泉茶葉有限公司の董事長である黄聖輝氏は、「推計では、茶園で産出される岩茶の1斤の平均コストは約1500元で、茶園は武夷岩茶の正岩茶区に位置し、ここ数年でもこの産地の茶葉の価格は最も高くなっている」と話します。
調べてみると、正岩産地の岩茶はさらにいくつかの山場によって細分化され、それぞれの山場によって茶葉の価格には差があります。たとえば、ここ数年流行していて、市中では”牛肉”と呼ばれる牛欄坑肉桂は、その名は牛欄坑の山から来ており、1斤の販売価格は数万元から一~二十万元まで様々です。”馬肉”と称される武夷山馬頭岩肉桂は、一斤の価格は数千元から1万元まで様々です。

正岩産地は、武夷山の核心景区にある72㎢の地域にあり、茶園面積は2万畝あまりで、年間の岩茶の産量は100万斤あまりです。茶園の絶対的多数は天心村に位置し、干ばつの影響を受け今年、天心村の茶葉の産量は減少していますが、茶葉の価格は安定していて、1斤の生葉の買い取り価格は1~200元から6~700元まで様々で、10斤の生葉から1斤の製品茶ができます。値段は高いですが、それでも多くの茶商が外地から買い付けにやって来ます。

”ブーム”になっている正岩茶と比べ、中~低価格の岩茶は”冷え込み”に遭遇しています。武夷山市の茶園面積は14.8万畝で、毎年岩茶の産量は1万トンあまりで、正岩茶はわずかに5%前後を占めるに過ぎません。正岩茶産地のほかでは、多くの中~低価格の岩茶が売れずにいます。
武夷山市星村鎮黄村には1.2万畝の茶園があり、村には168社の茶葉会社があって、村民は皆お茶を植え、茶葉の年間産量は百万斤近くになります。茗川世府合作社の理事長である黄正華氏によると、今年の茶葉は30%以上減産し、荒茶の購入価格は1斤100~200元で、例年よりも少し良いのですが、それでも茶農家の手元には多くの茶葉が在庫として残っていると言います。
中~低価格の岩茶の売れ残りは全般的な現象です。武夷山市の茶葉従事者は12万人あまりあり、登録している茶葉会社は4300社あまりあり、大規模な茶業者は30社で、茶葉の生産は農家や中小零細企業が、自分で栽培し、各家庭や会社が毎年数千斤の茶葉を生産し、主に茶葉会社、茶商が購入していきます。
多くの茶葉会社の社長によると、大~中型の茶葉会社の販売は比較的安定していますが、大多数の零細茶葉会社、個人の農家はブランドの知名度が高くなく、茶葉が同質化していて、販路も単一であり、加えて、大量の”偽ブランド茶”の侵入があり、茶葉の販売が滞っているのです、と言います。

 

2.本物と偽り、派手な宣伝をします

武夷岩茶の高値は、その製造工程が複雑で、製造工程が数十に及び、1年に1回しか茶を作らず、3~5ヶ月かかるということによります。中~低価格の岩茶でも1斤のコストは100元以上です。
武夷山の業界関係者によると、市場は低価格な製茶を施した外地茶で溢れていて、農薬残留の問題もありますし、外地の茶商が武夷山で茶葉会社を登記して外地のお茶をすり替えて販売したり、ほんの少しの岩茶と大量の外地茶を混ぜて販売する茶商もいます、と言います。

高価格帯の岩茶市場にも同様のリスクが存在し、市場で人気になっている正岩茶、山場茶には統一した基準やトレーサビリティシステムが無く、いくつかの茶商は稀少で、独特などをセールスポイントにして虚偽の宣伝をし、価格を吊り上げます。あるいは外山茶、外地茶を本物のように見せかけて消費者を欺くのです。
「公的な基準には、正岩、半岩、洲茶の区別は無く、さらには細分化した山場もありません。正岩茶、山場茶を表記するのは企業の行為によるものです」と武夷山市茶業局の局長である林建江氏は言います。

牛欄坑肉桂を例にすると、1斤数万元、ややもすると1~20万元にもなります。市場での岩茶会社、工房などは、みな”稀少、独特”をセールスポイントにし、”武夷岩茶の最高級品”、”産量が極めて限られている”、”味わいが唯一無二”などと売り込みます。ある茶商は少量の牛欄坑肉桂を購入し、それをほかの乙6あの混ぜて高値で販売しており、多くの茶商はもっと直接的にほかの産地のお茶を牛欄坑肉桂と詐称して販売しています。

多くの国家級無形文化遺産武夷岩茶(大紅袍)製造技術伝承人によると、山谷の岩石、砂礫の土壌で成長した岩茶は、”岩骨花香”という韵味があるとみなされますが、核心景区、山場の間で産出される茶葉にはそんなに大きな差は無く、味わいの違いは多くは製造技法、火の扱いなどによって生じるものです、と言います。
この手の吊り上げはよく見られます。福州、厦門などの岩茶市場に行ってみると、1斤数千元、1万元、さらには数万元になる岩茶があり、多くは”山場茶”、”坑澗茶”などの旗印を掲げ、”茶湯が滑らか”、”丹田から身体を温める”、”坑澗の草木の香りに溢れている”、”味わいに覇気がある”などのように言葉を用いて、真偽を判別しにくくしています。
「多くの高価格帯のお茶は、福州、厦門などの茶商に武夷山で購入されたあと、それぞれの山場のラベルを包装に貼り付け、ありもしない名前を謳って、数倍ないしは10倍以上の価格で売り出されます」と多くの茶農家が言います。福州、厦門などには専門の値段吊り上げを行う販売チームがあり、茶葉の利潤の”ほとんど”は彼らに持って行かれます。

 

3.多くの人の手によって”金の看板”を磨くのみです

多くの国家級無形文化遺産武夷岩茶(大紅袍)製造技術伝承人によると、茶葉の品質は様々な要素によって決定され、山場、坑澗などの概念を騙って、特定の産地だけが唯一の要素であるかのようにすることは、消費者に対してミスリードを起こします。産地以外に、武夷岩茶の文化的価値、ブランド価値など多くの要素が含まれていることを見逃すことは出来ません、と言います。

武夷山は世界の紅茶と烏龍茶の発祥の地で、中国茶の素晴らしい代名詞の一つです。取材に応じてくれた多くの業界関係者は、吊り上げの概念で価格を押し上げ、偽物を本物と偽るような市場の混乱を止めて、多様な製品のシステムをつくって、価格の標準化を実現し、品質の等級化を図って、武夷岩茶の千年にわたる”金の看板”を磨き上げ、より多くの大規模な企業とブランド企業を作るべきだと提案しています。

これについて、地元政府も徐々に力を入れ始めています。武夷山市は”偽ブランド茶”の状況に対し、昨年4月から”茶青カード(茶青卡)”と”商品ラベル”によるトレーサビリティシステムを始めました。”茶青カード”は、武夷山市の茶農家、茶葉会社が申請して受領するもので、茶園の位置、面積、茶樹の種類、生葉の年間産量などの情報が記載されています。茶葉会社は”茶青カード”にある生葉の数量に応じて、”商品ラベル”を受領することができ、消費者は”商品ラベル”をQRコードで読み取ることで、”武夷山で作られた大紅袍”あるいは”正山小種”であるかどうかを識別できるようになります。現在、340軒あまりの茶農家が”茶青カード”を受領し、105社の茶葉会社が”商品ラベル”の使用権を得ています。
龍頭企業、合作社などもその中に加入しており、茶農家の自家栽培、管理、茶葉の販売などを主とした経営モデルから発展させて、ブランドをつくり、品質を高め、販路を拡大するという方向に進めています。
茗川世府合作社は、黄村と周辺の茶農家茶葉会社を統合してできた合作社で、119軒の茶農家の8800畝の茶園をカバーしています。黄正華氏によると、合作社は茶農家が茶園を生態茶園に改造することを進めており、有機肥料を使い、茶葉は統一して専門家へ送って等級の判定を行っていて、品質によって等級を確定するという価格システムにしています。”品質を高めれば、茶葉の販売量も増加するのです”と言います。
「武夷岩茶の品質は主に生態環境によるもので、山、水、土壌が良く保護されていなければなりません」と武夷山市委員会書記の江建華氏は言います。今後3年で、生態保護に力を入れ、茶業を転換してアップグレードさせ、標準生産を実施し、産業全体のサプライチェーンの競争力を高めて、茶葉会社が特色ある茶食品、茶飲料などの高度加工製品といった新商品開発を支援し、茶産業の高品質な成長を実現します、と話しています。

 

最近、流行している正岩茶の中の産地を特定したお茶(山場茶)の生産量は、このようなものなので、ほとんど偽物が野放し状態になっているわけです。
その一方で、十分に美味しいと感じるお茶は、著名な産地・正岩茶では無いという理由から安値放置になっている状態です。
結局、消費者も売り手も、品質を判断する材料を産地名やメーカー・作り手の名前、さらには値段以外に有していないことが問題であるように感じます。
骨董品もなまじっか知っている人が最も騙されるといいますが、名前だけに振り回されるお茶の選び方は決して褒められたものではありませんし、健全なお茶の世界とは程遠いように感じます。

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