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英徳茶の過去・現在・未来

紅茶の産地として知られる広東省英徳市の茶産業について整理された記事がありましたので、ご紹介します。

 

広東省随一の県レベルの茶産地である、英徳は中国紅茶の郷であり、英徳紅茶と雲南省の滇紅、安徽省の祁紅は中国三大紅茶と並び称されます。英徳の森林カバー率は68.64%に達し、土壌は肥沃で、ph値は4.5~5.5の間で、年平均気温は21.4℃、年平均降雨量は1837mmで、季候も良く、茶樹の成長に極めて適しており、古くからの茶産地です。

英徳茶の前世

紅茶の優秀な新人ですが、英徳の茶の栽培の歴史は古く、記述がある限りは1200年あまり前の唐代にまで遡ることができ、その中で重要なものの一つは陸羽の『茶経』にある記載です。”…嶺南は福州、建州、韶州、象州に生ず。その恩、播、費、夷、鄂、袁、吉、福、建、泉、韶、象の十一州は未詳である。往往にして之を得るに,其の味極めて佳し。”
宋、明の時代を経て、清代まで広東の産茶県の一つでした。当然、その時期の英徳の茶の生産規模はさほど大きくはありませんでした。清朝末から新中国成立までは、戦乱が相次ぎ、当時の茶園はおおよそ凋落していました。
新中国成立の初期である、1956年、中央政府の指示の下、英徳に比較的大規模な紅茶商品の基地が建設されました。1959年、第1弾の英徳紅茶が世に出て、正式に国家により統一買い上げ統一販売が始まり、買い上げられた茶葉は国外へ輸出されました。1988年には輸出量にピークに達し、その後勢いは衰えてしまいます。1989年には不振に陥り、1991年に国は英徳紅茶の統一買い上げ統一販売を停止し、これが当時においてはブロークンティーに依存していた英徳のお茶に致命的な打撃を与え、わずか3年の間に、英徳紅茶の生産は低迷期に入ってしまいます。

英徳茶の今

21世紀の初めになり、中国人が紅茶を飲むようになってくるに従って、英徳紅茶は次第に活気を取り戻していきます。2003年までは、英徳の茶園は僅か2万畝でした。2006年、”英徳紅茶”は国家品質検査総局により国家地理的表示保護製品と認められました。2012年から2018年にかけて、茶園面積は平均して毎年1万畝ずつ規模を拡大していきました。
2018年、英徳市全域の茶葉生産量は8300トンで、そのうち紅茶の山頂は7700トンです。市全域の茶葉総産出額は30.6億元で、総合産出額は36億元です。
2019年、市内の茶園面積は14.1万畝、荒茶の総産量は1.1万トン、総産出額は41億元、総合産出額は48億元です。2019年10月、英徳紅茶は国際茶委員会により、”世界高香紅茶”の栄誉ある称号を授けられ、英徳市は”2019中国茶業百強県”、”2019中国茶旅融合十強模範県”に選ばれました。

英徳茶産業の”英徳モデル”

英徳は”四位一体、三産融合、生態引領、科技支撑”の”英徳モデル”を打ち出しており、これは他の地域の農業ブランド構築において、十分に参考にする意義のあるものです。
四位一体。禁煙、英徳は政府が指導し、企業が主体となり、科学研究院がサポートし、業界が一段となって成長し、ともに力を合わせています。伝統的な茶の栽培製茶から、縦横に双方向的な全産業チェーンモデルによる急速な成長を目指しています。政府は、地域公共ブランドを磨き上げる指導を行っていて、多くの企業はそれぞれの成長分野を追求し、百花斉放、百家争鳴の良好な競争状態を生み出しています。科学研究院は、一連の地方の特色のある茶樹品種を栽培し、品種の多様性、豊富性、高品質な成長を促進しています。
三産融合。紅茶生産と英徳が保有する独特の文化と特色あるレジャー観光産業が相互に補い合い、産業園における第三次産業の融合的な発展を促進し、二次産業と三次産業の産出額が総産出額の比重の35%以上を占められるようになってきており、産業が動き始めることで周辺の農民が豊かになり、目覚ましい経済効益を産み出しています。
生態引領。長年、英徳市はさまざまな財政資金を統合して用いて、全域の生態茶園緑色防除技術を広め、農業措置による防除、物理的防除、生物的防除などの病虫害防除策を講じ、さらに省の茶葉科学研究所の模範によって、生態茶園建設を推進しています。
科技支撑。近年、英徳は省レベルの紅茶科学技術イノベーション模範茶園を積極的に打ち出しており、国家農業情報化プロジェクト技術研究センター、省農業科学院、河南農業大学などの科学研究機関や大学などの技術力を用いて、さらに英徳紅茶の栽培レベルと加工能力を高めています。スマート生態茶園3.0はその1つの良い事例です。

”多くの品種、一つの特性”

以上のように様々なデータや獲得してきた名誉から、英徳紅茶は過去の時間において、特に輝かしい成績を収めてきました。しかし、英徳茶産業は発展していく中で問題に遭遇していることを無視することは出来ません。
”1つの品種が1つの産業を支える”。英徳市は科学技術を利用することで品種の多様性を進めてきたのですが、現在見たところ、多くの人の心の中では、英徳には英徳紅茶しかなく、さらに英徳紅茶は”英紅九号”という1つの品種しか無いと思われています。社会の成長と消費者の嗜好が変化するにつれ、このような状況のリスクはどんどん高くなっています。
このため、英徳は英徳紅茶の専用品種だけを発展させるだけではなく、品種の種類を拡大し、さらに全国の茶業界での知名度を高めて、”英紅九号”と同じようなレベルの効果を発現できるようにし、英徳茶の販売チャネルと規模を拡大させて行こうとしています。
統一的な製品の特徴に欠けています。英徳茶は特に突出した製品の特徴があります。英徳茶製品の香りは独特で、識別度は高いのですが、公共ブランドの建設を進めるにおいては、英徳茶には消費者が容易に記憶できるような特徴がまだ提示できていません。
このため、英徳茶産地は大葉紅茶の製品特徴をよりハッキリと示し、自らのロゴとなる基準を定め、これとともに製品特性をよりはっきりとさせ、宣伝やプロモーションを容易にすることが必要です。
ここ数年、英徳茶産業は新しい振興と成長の機会を迎えており、産業規模は大きくなり続けています。もし品種と特徴の問題を解決することが出来れば、英徳茶はもっとより遠くまで行けると確信しています。

 

英徳紅茶の情報は日本ではかなり薄いのですが、基本的には新中国成立後に輸出用茶(とりわけ紅砕茶・ブロークンティー)の産地として発展。
しかし、1989年の例の事件以降、輸出が不振に陥ったこともあり、しばらく下火になっていた産地です。
その中で、英紅九号という雲南大葉種からの選抜品種が生まれて、これを旗印に紅茶ブームを捉えて成長してきました。
とはいえ、単一の製品、品種に偏った茶業では、なかなかリスクも高いので、それを転換しようという局面に来ているようです。
特に「英徳茶といえば、このような特徴のお茶」という消費者にも分かりやすい特色を打ち出したいということなのですが、これはどこの産地にも共通の悩みだと感じます。

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