プーアル茶を飲んでいると、時々、煙のような香りのするものに当たることがあります。
よく言われるのは、殺青(釜炒り)の時の煙によるものだ、というものですが、どうもそれだけではないようです。
プーアル茶のメーカーの一つである同慶號の解説をご紹介します。
プーアル茶の煙のような香りはどこから来るのでしょうか?
煙のような香りは良いものなのでしょうか?
お茶の界隈ではずっと論争が続いていて、十人の茶人がいれば十種類の見方があります。
プーアル茶の”煙味”が出来る本当の理由については、だいたい多くの中国のプーアル茶界隈の人たちの中でも”未解決の謎”とされていることがほとんどです。
仁を重んじる者は仁を見て、智を重んずる者は智を見るものです(訳注:同じ問題でも人によって見方が違うということ)。ある人はプーアル茶の”煙香”を好み、プーアル茶で最も魅力的な息づかいの一つとして見ます。ある人はこれを出来るだけ避けようとします。良いものなのか、悪いものなのか。どのようにして煙味は生まれるのでしょうか?
1.第一の種類:煙燻味
この種の味は、中程度熟成させたお茶によく見られるもので、この原因は茶葉を殺青し、揉捻、日干し、保存をしていく過程の中で、近くで人がご飯を作るために火を熾したり、あるいは薪の火で何かを焼いたりする時に生まれるものです。
この種の煙で燻したような香りが茶葉に付くのは、特に雨の日で、以前の茶農家では茶が十分に乾燥しておらず、乾燥設備が整ってない場合であれば、下で火をつけて乾かすより仕方が無かったからです。
現在はこのような煙燻味は非常に少なくなっています。その原因の一つはプーアル茶の現在の加工条件が以前に比べるとずっと良くなっているからで、茶農家は加工の際に環境の中に異味が無いことに十分注意するようになっているので、基本的には茶葉が煙の味を吸うことはありません。雨の火であっても茶農家の家には既に基本的には乾燥棚や乾燥機がありますし、もしそのようなものが無ければ、現在は生葉を初製工場に売りに行くことがほとんどで、自分で薪を焚いて乾燥させるなどということは必要無いので、このために煙燻味は基本的にはもはや過去の歴史となっています。
もしこのような煙燻味がそれほど重くなければ、散茶であれば2~3年で自然に消えていきますし、餅茶であれば十年くらいあれば消えるので、茶葉そのものの品質にはそんなに大きな影響はありません。
2.第二の種類:煙焦味
人によっては糊味とも言い、これが形成される原因は主に2種類あります。
1つは炒り終わったロットのお茶を、十分に釜を洗わなかったり、あまり清潔な状態でない状態で次のロットのお茶を釜炒りしてしまうと、前に炒った茶葉の破片などが鍋の中で焦げ葉(糊片)として次のお茶の中に混入してしまうというものです。このような煙味はそれほど重くなく、比較的よく見るもので、茶葉そのものの品質に対する影響は大きくなく、ほとんど無視してもよいくらいです。
もう1つは茶葉を炒る際に温度を十分にコントロール出来ていない場合で、たとえば釜に入れる際の温度が高すぎたり、お茶を炒る人があまり熟練していなくて、かき混ぜるのが遅かったりすると茶葉の焦げが出現してしまいます。また萎凋の時にコントロールが十分ではなく、生葉の水分が過度に失われていると、炒るときに十分炒られていないお茶も焦げてしまいますし、水分の抜けが不十分でも、炒る際に外側が十分に炒られていても、中は十分に炒られていないということが起こり、紅い茎や紅い葉にならないようにとその後も炒り続けてしまうと、外側が十分に炒ることが出来ても、外側は焦げてしまうということになります。
3.第三の種類:陳化によって生成
茶葉に含まれる多くの物質は空気との接触によって転化した後、生成された独特の香気が、特に乾倉での保存を行う環境にあります。
一部の生茶は新茶の段階で、晒青が十分に行われ、太陽の味が濃郁であり、煙味が無かったとしても、3~4年ほど陳化させると、煙の香りを生じることがあります。しかしこの種の煙の香りは薪の火の煙の香りとはことなり、一種のとても自然な香気です。
有名な”下関茶煙香”はその一部はこのような原因であり、雲南でも高原地区にあり、日に晒す時間もとても長くて、紫外線もずっと強烈ですが、温度と湿度はいずれも違います。
下関の独特な地理的な位置から下関は風が常に吹いており、空気中の多くの水分を持って行ってしまいます。そのため、下関の機構は乾燥していると言うことができ、加えて、長期間の荒茶が保存されるとなれば、必然的に独特な菌類の感k尿が出来上がるので、ここの煙香は勐海、西双版納とその他の地域のものとは全く違うのです。
時間が過ぎて行けば転化が進み、プーアル茶の中の煙の味は一種の独特な味わいになることもありますし、あるいは躍動感や層次感などにもなります。
まるで生命のようでもあり、これがプーアル茶の面白いところでもあります。
プーアル茶の煙のような味については、諸説が乱立しているのですが、この説明は非常に腑に落ちやすい解説だったかと思います。
よく言われる殺青時の煙の混入や乾燥設備の不備に関しては、最近の生産環境の急速な進歩で改善されているのはおそらく事実でしょう。
同じような香りや味があったとしても、それが生成される原因には複数あることが多いので、単純化をしてしまうと、やはり見誤ります。
これは頭痛が起こるという原因が一つではないのと同じですね。